ライフの焼き芋

スーパーの焼き芋が好きだ。

あの焼いた芋を売るだけにしては仰々しい、金持ちが持つレコードプレイヤーのような見た目の機械が至るスーパーマーケットで当たり前のように設置されているこの世の中を愛せずにはいられない。

店内に足を踏み入れた瞬間焼き芋の香りがするとテンションがあがる。ここには焼き芋があるぞ、と。どこから流れているのか焼き芋専用のBGMまで流している店舗もあり、あの機械に手を突っ込んで芋を取り出している人間を私は見たことがないが、売場に力を入れられている様子から察するに私が想像する以上に売り上げは良いのだろう。(数行前に書いたようにあの機械が当たり前になっている時点で当然ではあるが)

そんな単純な頭の作りをしている私であるが、どんな焼き芋でも良いわけではない。

焼き芋が好きだと言ったが、厳密には"粉質のほくほくした"焼き芋が好きなのだ。ねっとりした食感で甘味が強く、謳い文句に"蜜"という言葉が使われがちなタイプの焼き芋はそこまで好きではない。目の前にあったらまるまる一本食べきるくらいにはおいしいと感じるが、どこかそうじゃないと思ってしまうのだ。

私は「最近のねっとり焼き芋ブームには参ったものだよ」などと面倒な少数派ぶったことを常々思っているのだがそもそも世の中の人間は焼き芋と言えばどのような食感を思い浮かべるのだろうか。ネプリーグの世の中の様々な物事の中で何かが占めている割合を当てるゲームで出題してほしい。

スーパーの焼き芋を買う人間なら分かると思うが、大抵スーパーで売られているのはねっとりタイプの焼き芋なのだ。売場に食感が明示されていない場合も芋の品種を見ればわかる。だいたい紅はるか、紅天使などのねっとりタイプだ。昔からこれがスタンダードだったんだっけ?と思うくらい前からねっとり芋ばかり見ている気がする。

たまに紅はるかでもそこまでねっとりしていないものがあるので賭けで買うこともある。焼き芋機ではなく半分に切られてパックに詰められている場合は断面で判断することができる。

(芋は同じものでも収穫時期によって食感が変わるらしい。後は単純に焼き方の問題か。)

 

ここからが本題である。

たまに2種類の食感の焼き芋を置いているスーパーに出会うことがある。私はそのような様々な顧客の要望に応えたいという真摯な姿勢を感じるスーパーを愛している。

冬の間、幸いにも1番近くのスーパーが2種類の食感の焼き芋を置いており、頻繁に購入していたのだが春になった頃から1種類しか置かなくなってしまった。

暖かい時期でも焼き芋を置いていることにまずは感謝すべきなのは分かっているが、人間は一度生活水準を上げると同じかそれ以上でないと満足することができなくなってしまうものなのだ。

そんな傷心のなか初めて訪れたライフ東日暮里店で、ほくほくタイプの焼き芋を見つけた。

正直買ったときのテンションは「ラッキー」くらいのものだったが、食べてみて驚いた。私の理想の焼き芋すぎる。絶妙にしっとりほくほく、程よい甘さ。卵焼きのような綺麗な色の断面も素晴らしい。

あまりのうまさに過度に顔がほころび、顔も分からない生産者、スーパーのスタッフの方々に感謝した。

その数日後にあんなうまいもの早々に売りきれてしまう、と午前中に家を出て電車に乗ってライフ東日暮里店に向かい、ストック分含め3本購入して帰ってきた。

ストックは1週間分を想定し、切り分けてラップで包んで冷凍保存していたが3日程で食べきってしまった。

食べ物をストックしておくという行為は食欲旺盛な人間にはとことん向いていない。

ちなみに、なぜ東日暮里店と限定したのかというと4店舗程訪れた中で2種類の焼き芋を置いていたのは東日暮里店だけだったからだ。

他にもライフ東日暮里店はなかなか見かけることがない私の好きなパン、「ポンデスティック チーズ」を売っているのでその点でも最高である。

これからもお世話になります。